平成28年12月愛媛県議会一般質問(全文)

おはようございます。

自由民主党の松尾和久です。

先般の台風16号は日本各地に大きな爪痕を残していきました。犠牲となられた方のご冥福をお祈りし、被害に遭われた皆様にお見舞いを申し上げます。

この夏行われました参議院選挙は18歳、19歳に選挙権が与えられて初めての選挙でありました。投票率は高かったとは言えませんが、投票行動を通じて政治に参画した意義は大きいと思います。これから、この若者たちが政治に希望をもって、関心を持ち、政治に参画してくれるかどうかは、私たち政治に携わる者の責任でもあると思います。これからも襟を正して、子どもや若者が夢を持てる社会を実現するために、信頼される政治を目指して地道に取り組んで参りたいと思います。

そんな想いを持ちながら子どもへの支援、防災対策などを中心に質問をさせて頂きます。

まず初めに、子どもの貧困対策についてお伺いいたします。

厚生労働省が2014年にまとめた「国民生活基礎調査」によると、大人も含めた所得の低い人の割合を示す「相対的貧困率」は16.1%でした。ここで言う貧困率とは経済協力開発機構(OECD)の基準を用いて、収入から税金などを差し引いた全世帯の可処分所得を1人当たりに換算して低い順に並べ、中央の額の半分に満たない人の割合であります。この調査の行われた2012年の場合は、所得が122万円未満の人の割合を指しています。

そして、この調査を行った2012年のこれらの世帯で暮らす18歳未満の子どもを対象にした「子どもの貧困率」は16.3%で1985年の統計開始以来、初めて「相対的貧困率」を「子どもの貧困率」が上回りました。

16.3%というのは、子どもの6~7人に1人が貧困状態にあるということです。

「子どもの貧困」という状況は子どもの育ちにどういった影響を及ぼすのでしょうか。

まず、学力に影響することが明らかになっています。文部科学省が一昨年の3月に発表した、お茶の水女子大学による平成25年度全国学力・学習状況調査の結果分析によると、世帯収入が高いほど子どもの学力が高い傾向があったとされています。言い換えれば、世帯収入の低い家庭の子どもほど、全国学力・学習状況調査の正答率が低い傾向にあるということであり、家庭の経済格差が学力格差を生んでいると言えるのではないでしょうか。

また、学力のみならず、子ども期に貧困であることは、健康状態や体質にも影響することを示した調査結果もあるようです。

さらには、現代の課題である親の働き方なども原因として、特にひとり親家庭など家庭における親と子の関わりが弱くなってしまうと、子どもは孤独感を持ってしまい、子どもの孤立を招くことにもつながってしまうのではないでしょうか。子どもの孤立は引きこもりや不登校などいろいろな問題の原因になりかねず、子どもの居場所を確保していくことも非常に重要なことであります。先にも述べましたとおり、子どもの居場所づくりが必要とされる今日、その担うべき役割は今後益々、重要となってくると思います。

こうした各種調査結果や、実態を受け、国では2013年に子どもの貧困対策法を制定し、大綱も定めてきました。また、昨年の12月には子どもの貧困対策会議において「すべての子どもの安心と希望の実現プロジェクト」を決定し、ひとり親家庭、多子世帯等への支援の充実を図ろうとしております。同プロジェクトは今年2月に愛称を「すくすくサポート・プロジェクト」と決定し、子どもの居場所づくりや、幼児教育無償化へ向けた取組みの段階的推進、高校生等奨学給付金事業の充実など、生活、学び、仕事、住まいを支援し、ひとり親家庭等を社会全体で応援する仕組みの構築を目指しています。

県においても、未来を担う子どもの希望を支える取組みの充実を図っていくことが求められていると考えます。家庭の事情によって進学できない、それによって夢をあきらめてしまう子どもを1人でも少なくし、家庭の事情に左右されることなく、すべての子どもが夢に向かってチャレンジする機会を持てる社会を創っていくことが、愛顔あふれる愛媛県の実現に不可欠だと考えます。

そこでお伺いいたします。

子どもの貧困とその連鎖を食い止めるため、県としてこれまでどのように取り組んでこられたのか、また、今後の対応をどう考えておられるのかお聞かせください。

 

次に児童館の活用、充実策についてお伺いいたします。

児童館は児童福祉法第40条に基づいた児童厚生施設で、児童に健全な遊びを与え、その健康を増進し、または情操を豊かにすることを目的とする施設であります。

現在県内では公設公営、公設民営、民設民営と、その設置、運営形態は様々でありますが、それぞれの地域において子どものみならず、その保護者の皆さんも、交流、相談などの場として利用されております。

県では「えひめこどもの城」が所管の児童館となりますが、「えひめこどもの城」にも県内各地から利用者が訪れ、遊具を使って思いっきり体を動かせて遊べる子どもはもちろんのこと、子育て世代の保護者からも親しまれているところであります。

私の地元、松山市内には、県が所管するえひめこどもの城を含めて児童館が9か所あり、2010年の段階で、一児童館あたりの児童数は約9,500人と四国の市町の中でも多いことから、もう少し整備されてもいいのかなとは思いますが、児童厚生員などの人員配置や設備は他の市町と比べても充実しております。

私の子どもたちも時折、近くの児童館に母親や、おばあちゃんに連れられて遊びに行っています。小物を作ったり、児童館で知り合った友達と遊んだりして、楽しかったと言って帰って参ります。

この児童館では年間約57,000人、一日平均182人の利用者があります。子どもの遊び場として、子育て世代の保護者同士の触れ合いの場として欠かせない場となっております。

一方で、児童館の設置は各市町によって充実度に差があり、県内の児童館でも児童厚生員の配置や、児童館の活動などにはばらつきがあるのが現状であります。

また、児童館が果たすべき本来の機能・役割は「遊びを通じた子どもの健全育成」でありますが、平成23年3月31日に厚生労働省より発出された「児童館ガイドライン」では、その他に「日常の生活の支援」や「問題の発生予防・早期発見と対策」、「子育て家庭への支援」等も含まれております。しかし、現在では、地域の皆さんや保護者の皆さんも遊び場としての児童館は認識されておりますが、加えて児童館が核家族化が進む中で子育てに悩む保護者や家庭に対する支援活動、友達との人間関係に悩む子どもへの相談対応、学校や地域との連携機能など多くの役割も担っていることは、児童館が地域における児童福祉の拠点であるにも関わらず、残念なことにあまり認識されていないように思います。

言うまでもなく、子どもの健全な育成には切れ目のない支援が必要となります。児童館は0歳児から18歳未満の児童が利用できる、つまり、

子どもが18歳になるまで切れ目のない支援ができる貴重な社会福祉施設であります。

県内の市町において同レベルのサービスが受けられることが、最も望ましいことではありますが、県には、児童館がさらに活用されるよう、積極的に取り組んで頂きたいのであります。

そこでお伺いいたします。

県は、県内の児童館がさらに充実した施設となるよう、今後どのように取り組まれていくのかお聞かせください。

 

次にスクールサポーター制度についてお伺いいたします。

最近の少年非行を見ると、全国的には刑法犯の検挙・補導人員は、平成16年以降12年連続で減少しており、本県におきましても、平成27年の刑法犯の検挙・補導人員は588人で、10年前(1,342人)の半数以下になっているなど、全国と同様に数字的には良好に推移している状況が窺えます。

しかしながら、最近、埼玉県東松山市において、中学生を含む少年グループによる傷害致死事件が発生しておりますし、県内でも今年に入り、松山市で男子中学生が、万引き後に保安員に怪我をさせた強盗致傷事件や、西条市で男子高校生が自宅に放火した事件など、少年による社会の耳目を集める凶悪な事件が後を絶たない状況にあります。

また、携帯電話やインターネットの利用をきっかけとして、児童・生徒が児童買春や児童ポルノの被害者となる事件のほか、児童虐待やいじめ事案に関する報道をよく耳にするなど、少年を取り巻く環境は、依然として憂慮すべき状況にあると感じています。

そこで、少年非行を防止し、少年の健全育成を図るためには、警察活動のみならず、学校、地域が一体となった、児童・生徒に対する非行防止対策や非行少年等の立ち直り支援が不可欠であると考えております。

例えば、教育現場においては、いじめ事案をはじめ、校内暴力や問題行動を行う児童等への対応、さらには、学校・通学路等における安全確保対策に取り組んでおりますが、この種の問題は、学校と警察だけでなく、地域が連携し一体となった取組みが大切であると考えます。

こうした学校、警察、地域の連携を具現化するものとして、県内ではPTAや防犯ボランティア団体等が、平成28年8月現在で全国10番目に多い1,559台のいわゆる「青パト」による自主防犯活動を県内全域で行っているほか、県警では学校と警察のパイプ役として活動するスクールサポーター制度を導入し、少年の健全育成を目的に教育現場において、様々な活動に取り組んでいるとお聞きしております。

このスクールサポーターは、本県では平成24年度に2人、平成27年度には2人を増員し、現在4人が配置されていると伺っております。

学校現場では教員が対応しづらいケースの時に、このスクールサポーターが居て頂けることは大変心強いとの声も聴いており、今後も制度の充実と粘り強い活動に期待するものであります。

少年は、「地域の宝、愛媛の宝」であり、その少年が健やかに成長することは、県民すべての願いでもあります。

私も県民の1人としてこのスクールサポーターの活動が、少年を非行に走らせず、また、被害に遭わせないことに寄与し、少年の健全育成、ひいては、安全で安心な愛媛づくりが促進されるものと期待しております。

そこで、県警本部長にお伺いいたします。

県警察が所管しているスクールサポーター制度の概要と現在の活動状況についてお聞かせください。

 

次に、防災対策の観点から、豪雨対策と、ため池の整備についてお伺いいたします。

まず、豪雨対策についてお伺いいたします。

昨年9月に鬼怒川流域に甚大な被害をもたらした「関東・東北豪雨」や、一昨年8月に広島市における大規模な土砂災害の原因となった「平成26年8月豪雨」に象徴されるように、近年、雨の降り方が局地化、集中化、激甚化し、全国各地で観測史上最大雨量を記録する豪雨が頻発しております。

今年6月の梅雨前線では、熊本県において国内で観測史上4番目の時間雨量150mmという猛烈な雨となり、同県の木山川(きやまがわ)では、整備が完了している箇所で、計画規模を超える洪水により堤防が決壊し、広範囲にわたり浸水被害が発生しました。また、熊本市や宇土市(うとし)等では、民家の裏山で土砂崩れが発生し、5名の尊い命が犠牲となっています。

このような中、県が管理する河川においても、背後に市街地や公共施設など重要な施設を抱え、堤防が決壊した場合、大規模な被害につながる恐れのある箇所の延長は54kmに及ぶと聞いております。また、県内の1万5千箇所を超える土砂災害危険箇所のうち、保全人家5戸以上の危険箇所に限っても、その施設整備にかかる着手率は、約40%と聞いており、今後、益々、激甚化する豪雨により、甚大な被害が発生することを危惧しているところであります。

県においては、これまで、計画的に洪水対策や土砂災害対策などの施設整備を進めておられますが、今後、地球温暖化などの影響により、豪雨の発生リスクの高まりが懸念されている中、全国各地で発生しているような想定を超える豪雨から、県民の安全・安心を確保する対策も講じる必要があるのではないかと考えております。

そこでお伺いいたします。

県では、大規模な豪雨に備えた洪水対策や土砂災害対策に、今後どのように取り組んでいかれるのか、お聞かせください。

 

次に、

農業用ため池の整備に関してお伺いいたします。

先ほども触れました6月の梅雨前線豪雨では、南予地域を中心として、断続的な、また局地的な集中豪雨により、八幡浜市のみかん園で地すべりの恐れがあるとして近傍の住民に対して避難指示が発令されたほか、各地で土砂崩れが相次ぐなど多くの被害が発生しました。

このような中、6月23日には西予市において、ため池が決壊したという報道がありました。ため池自体は江戸時代に造られており、近年では堤体の補修箇所が増えるなど、老朽化がかなり進んでいたとのことで、幸い、早い段階での避難指示等により人的被害はなかったものの、一部で床下浸水や農地への流出土砂の流入等の被害があったとのことでした。

また、本年4月に発生した熊本地震においても、複数のため池にひび割れ等の被害が発生したと聞いております。

ため池に被害があると、そこを水源として農業を営んでいる農家の皆さんは大変な打撃を受けることになります。その大切なため池を守るため、農家の皆さんは協力して、普段から土手の草刈りや、水の管理など行っております。

言うまでもなく、ため池は農家にとって貴重な水源であるとともに、農村のシンボル的な景観や多くの生き物を育む場などの多面的機能を有しており、地域農業のため、そして豊かな農村環境のため、地域にとって欠かせない重要な施設であります。

しかしながら、3千を超える本県のため池は、その約8割が築造後百年以上経過していると言われており、今回のような豪雨はもとより、近く発生が想定されている南海トラフ地震に直面しても、決壊という最悪の事態に至ることのないよう、平時から適切な管理も含めて、ため池の老朽化対策及び耐震対策を推進していく必要があると考えます。

そこでお伺いいたします。

本県のため池の老朽化対策及び耐震対策の現状と、今後の対応についてどのように取り組んでいくのかお聞かせください。

 

最後に、松山市の水問題についてお伺いいたします。

先月30日、長期的水需給計画を検証していた松山市は、新たな水源として確保する必要のある不足水量を、日量4万8,000トンから4万トンに縮小するとの試算を公表しました。

今回公表した不足水量4万トンについて、市が設置した有識者や各種団体の意見を聴く「水資源対策検討委員会」では、「都市リスクに関する水量は、含めるべきではない」との意見や、「当然見込むべき」との意見など、賛否両論が出され、翌日の市議会の「水資源対策検討特別委員会」においては、一部に肯定する意見はあったものの、「恒常的に必要とする水量としては過大である」「集合住宅への新方式の追加は水不足とは無関係」などの批判的な意見が相次いだとマスコミ各社が報道していました。

平成6年の大渇水から20年以上が経過し、松山市が渇水問題の解決策として西条分水を決定してからも12年が経過した今日、松山市においては、市民の節水意識が向上し、補助制度創設により節水家電が普及した現状や、将来的な人口減少傾向などに鑑みたとき、黒瀬ダムからの分水ありきの議論だけで、松山市の水問題は解決するのでしょうか。

そもそも、平成16年の長期的水需給計画において、日量4万8,000トンが不足するとされた当時、平成27年度の松山市民の1人1日当たりの水使用量を310リットルと推計されましたが、平成26年では、281リットルまで減少しており、正に中核市で最も節水意識の高い都市となりました。この市民の努力だけでも日量約1万5,000トンが不要となる計算になります。

また、全国で「想定外」の異常気象が頻発していることから、これから都市の将来計画を考える上で様々なリスクを考慮することは必要とは思いますが、渇水を都市リスクというのであれば、まずは、渇水時のみ必要となる「臨時水源」を確保することで実効性のある対応を考えるべきではないかと思うのであります。

平成26年9月議会の一般質問において、私から松山市の水問題について質問した際、知事から「4者協議の状況を踏まえまして、広域調整を図る立場から、西条市と松山市がともに将来の安定した水利用を確保し、地域の発展につながるような方策を県として提案する時期が来ると思っている」との答弁がありました。その後、県は、平成27年8月に「西条と松山の水問題に関する6つの提案」を発表し、両市に提案されました。

「西条、松山両市の水問題を一緒に解決しませんか」との呼びかけから始まる、「西条の水文化を将来にわたり守るため、県営黒瀬ダムの具体的な活用方策を検討しませんか」「渇水時の西条市優先をルール化しませんか」などの6項目からなる提案であります。

これは、「西条市の水文化の源である地下水を将来にわたって維持し、沿岸部の塩水化を防止できる水量が黒瀬ダムにあり、その上でダムに余力がある。そこで、黒瀬ダムを活用して松山市の水問題を解決してはどうか」との提案だと承知しております。

しかし、今回、都市リスクという新たな議論がある中で、仮に平成6年レベルの大渇水が発生した場合に、両市の水問題を解決するだけの能力が黒瀬ダムにはあるのかといった疑問もわいてきます。

さて、今回、松山市が試算したこの不足水量4万トンの適否については、当然のことながら、水源の問題と水道料金の上昇を含め、しっかりと市民に説明し、市民の意見を踏まえ、市議会で議論を深めていくものとは考えますが、一方で9月5日の西条市議会では、自民クラブの伊藤議員の質問に対し、青野西条市長は「分水に応じることはできない。正式に終結させたいと考えている」との答弁をされたとの報道がありました。このままでは、松山市への分水はまだまだ時間がかかるのではないでしょうか。

そこで、お伺いいたします。

昨年の水問題に対する県の提案や、不足水量を縮小した今回の松山市の試算を踏まえ、今後、県として松山市の水問題にどのように取り組むのかお聞かせ願いたいのであります。

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