平成29年6月愛媛県議会一般質問(全文)

自由民主党の松尾和久です。

 

まず初めに、女性の活躍推進についてお伺いいたします。

少子高齢化、人口減少社会という構造的課題に直面する中、我が国が持続的に成長していくためには、女性や高齢者など、これまで就業希望を持ちながら、その機会が十分に提供されてこなかった方々にも就業していただき、労働参加率を向上させていくことが不可欠であります。

とりわけ、約270万人にも上るとされる、育児や介護などの理由から働く上で制約があり、適当な就職先が見いだせずにいる女性は我が国最大の潜在力です。

女性の活躍は、人手不足における労働力確保というだけでなく、企業をはじめ社会全体の成長に欠かせないものであり、女性にとって働きやすい環境を整備することは喫緊の課題となっています。

特に本県では高齢化が全国に先駆けて進行しており、人口増減率が全国39位と深刻な状況に瀕しています。

新聞社の調査によると6割近い県内企業から従業員不足の声が上がっています。

大手志向が強い昨今の就職状況を鑑みると、中小企業が大半を占める本県にとって厳しい状況ではありますが、その一方で、大企業よりもやりたいことができる中小企業を選ぶ優秀な学生も多くおり、就職に際してはワーク・ライフ・バランスを重視する意識も強まっています。

中小企業にとって、福利厚生面で大企業に勝つことは難しいことかもしれませんが、経営戦略として仕事のやりがいや人材育成、仕事と生活の両立支援制度を充実させることは可能であり、人材の確保にもつながる大きな武器ともなります。

大手調査会社の調査では、管理職に占める女性の割合は、企業規模が小さい企業ほど高くなっています。

小回りが利き、トップの判断で職場環境を変革できる中小企業こそ、多様性を確保し、ピンチをチャンスに変えていくことができるのではないでしょうか。

ぜひ、女性が働きやすく、働きがいのある県、ナンバーワンを目指していただきたいと考えております。

女性活躍を推進するには、制度改革、人材育成、意識改革の3つが重要であり、中でも意識改革の部分はトップダウンでメッセージを発信することが大切です。

昨年の12月に本県選出の塩崎恭久厚生労働大臣がイクボスを宣言いたしました。

働き方改革の旗振り役である厚生労働大臣の宣言によって、その機運が高まっていくことを期待しております。

また、資生堂の魚谷社長は「トップが強く働きかけない限り、組織に変化をもたらせない」と主張しておられますが、私も同感であります。

女性が活躍する社会を実現するためには、職場環境のみならず、家庭における男性の夫として、父親としての役割も重要であり、企業内での男性の育休取得や、家事への参加に対する理解と、それを当たり前と受け入れる雰囲気作りが必要であります。

その為にはトップが理解を示し、旗振り役となって取り組んでいくことが不可欠であると考えます。

このような中、県では知事のリーダーシップのもと、愛媛県版イクボス「ひめボス」の輪の拡大に取り組んでおられます。

トップが組織を変えていく意思表明であるひめボス宣言は組織変革の第一歩であり、重要な取組みだと思います。

制度改革、人材育成、意識改革どれをとっても時間も人も費用もかかり、多岐にわたる取組みが必要です。

今後も、女性活躍とひめボスを複合的に推進し、地域人材の確保、ひいては地域経済の活性化につなげていただきたいと思います。

そこでお伺いいたします。

女性の活躍推進については多角的に取り組むべき課題だと思いますが、県では、ひめボスを中心とするトップの意識改革をはじめ、女性の活躍推進についてどのように展開するのか、お聞かせください。

 

次に、私立幼稚園の人材確保策についてお伺いいたします。

子ども・子育て支援新制度の実施に伴う人材需要の増加を受け、とりわけ幼児教育の質を支える優秀な人材の確保が喫緊の課題となっております。

その背景として、保育の受け皿拡大を図るため、国・地方を挙げて、施設整備や保育士の確保に向けた取り組みが積極的に行われていることが挙げられます。

施設は整備したものの、それを支える人材の不足により、都市部での待機児童の解消は、目論見通りに進んでいない自治体が多いようであり、ここにきて、「保育士」の確保の問題が大きくクローズアップされています。

保育士が不足している要因の一つとして、他の業種との賃金格差が上げられますが、特に、待機児童問題が深刻な東京、大阪など都市部では、保育士を確保するため、待遇面の改善のみならず、支度金や家賃全額補助を行い、地方から働き手を確保しようとする動きも年々顕著になってきています。

このような中、平成28年6月に閣議決定された「ニッポン一億総活躍プラン」において、保育士と全産業の女性労働者との賃金格差の現状を踏まえ、保育士の処遇を改善する方針が示され、29年度の国予算に所要の経費が盛り込まれました。

また、保育所に加え、子ども・子育て支援新制度に移行した私立幼稚園及び認定こども園についても同様の措置が講じられることになっております。

幼稚園教員の確保や離職防止などが課題となる中、新制度に移行している園のみの処遇改善が進むこととなれば、私学助成を選択する私立幼稚園の人材難が更に深刻化することにもなりかねません。

このため、文部科学省においては、新制度に移行せず、私学助成を選択する私立幼稚園についても、今年度から、各園が通常のベースアップに上乗せする形で処遇改善を行う場合に、国と県で補助する制度を打ち出したところであり、人材確保に大いに資するものと期待しております。

文科省が制度を打ち出す以前から、県単独で幼稚園の人材確保策を講じている埼玉県などの例もありますが、本県の未来を担う子供たちを育むためにも、幼児教育の質の維持・向上が不可欠であり、優秀な幼稚園教員の確保を図る上で、処遇改善は大きな課題であります。

人材不足にあえぐ私立幼稚園が、優秀な人材を安定的に確保するためにも、処遇改善に積極的に取り組む園に対し、国・県の継続的な支援が必要と考えます。

そこでお伺いいたします。

県では、私立幼稚園の人材確保支援について、どのようにお考えか、御所見をお聞かせください。

 

次にがん対策の推進についてお伺いいたします。

がんになってもお互いに支え合い、安心してくらしていける地域社会を実現することを決意して制定された「愛媛県がん対策推進条例」の施行から7年が経過しました。

条例施行後は、県民総ぐるみでがん対策を推進するため、県議会がん対策推進議員連盟はもとより、行政、がん患者団体や保健医療関係者、経済団体など各界の幅広い委員から構成される「愛媛県がん対策推進委員会」において、本県のがんを取り巻く状況や必要な施策等について、様々な議論が重ねられてきました。

また、平成25年3月には第2期の「愛媛県がん対策推進計画」が策定され、従来の予防・検診、相談支援、医療、緩和ケアなどのほか、新たに「がん教育」「就労支援」なども施策に追加されるなど、更なる充実が図られてきたところであります。

このような中、国においては、昨年12月に、10年ぶりに「がん対策基本法」が改正され、基本理念として、がん患者が尊厳を保持しつつ安心して暮らすことのできる社会の構築を目指し、適切ながん医療のみならず、福祉的支援、教育的支援など社会的な支援を受けられるようにすることが追加されたほか、事業主に対し、がん患者の雇用の継続等に配慮を求めることや、希少がん・難治性がんの研究促進など、多くの項目が、新たに盛り込まれました。

今年の夏には、この改正がん対策基本法の理念を踏まえ、国の第3期となる「がん対策推進基本計画」が策定される見通しです。

そこでお伺いいたします。

現行の「愛媛県がん対策推進計画」は、本年度末をもって、5年間の計画期間が満了しますが、これまでのがん対策の取組みをどのように評価するのか、また、次期計画の検討をどのように進めていくのか、お聞かせください。

 

次に、グローバルGAP等の認証取得支援の取組みについてお伺いいたします。

ご案内のとおり、本県では果樹農業を筆頭に、安全・安心かつ高品質な農産物が数多く生産されており、県では知事自らが先頭に立ったトップセールスをはじめ、営業本部による各方面への精力的な売込みなど、広く国内外をターゲットとした販路開拓にご尽力されているところであります。

こうした中、2020年に開催される東京オリンピック・パラリンピックの大会組織委員会は、本年3月、選手村などで使われる食材の調達基準を決定し、農産物については、リオ五輪と同様に、国際的な生産工程管理の認証制度であるグローバルGAP等の認証取得が必須要件とされました。

具体的には、欧州でスタートして世界で最も普及しているグローバルGAP、国際水準に対応した高度な日本版GAPであるJ(ジェイ)GAP(ギャップ)アドバンスのほか、国の定めるガイドラインに準拠した各県のGAP認証も含むとされたことから、国においては、2017年から2020年をGAP認証取得促進の集中期間と位置付け、2019年度末までに取得農家などの数を現在の3倍以上とする目標を立てるなど、取組みを強化することとしております。

また、このグローバルGAP等については、単に東京オリンピック・パラリンピックへの対応に止まらず、今後、国内外における食品の取引条件として位置付ける動きが広がってくるのは避けられない状況にあると思うのであります。

GAP認証取得には、多額の経費負担や審査への対応など、クリアすべき課題も浮き彫りとなっていますが、県産農産物の競争力を高め、海外輸出も含めた販路拡大を図っていくためには、この機会に広く県内の生産者を対象に、GAP認証取得を積極的に推進していく必要があると考えます。

そこでお伺いいたします。

県は、グローバルGAP等の認証取得について、どのように支援し、推進していくのか、御所見をお聞かせください。

 

次に、JR松山駅付近連続立体交差事業についてお伺いいたします。

JR松山駅付近連続立体交差事業は、県都松山の陸の玄関口に相応しい魅力あるまちづくりを目指し、松山市の施行する「松山駅周辺土地区画整理事業」と一体的な整備を進めているものであります。

本県の空の玄関口「松山空港」、海の玄関口「松山観光港」は、これまで順次整備が進められて参りましたが、陸の玄関口であるJR松山駅の整備は遅れをとっていました。

しかしながら、平成16年度にJR松山駅付近連続立体交差事業着工準備が採択され、19年度には都市計画決定、20年度には都市計画事業認可となり、長年の夢が実現に向け、動き出したものであります。

ご案内のとおり、現在のJR松山駅周辺地区は、JR予讃線と車両基地・貨物駅により市街地が東西に分断されており、踏切による交通渋滞が慢性化するとともに、駅周辺の均衡ある発展が著しく阻害されているほか、消防活動が困難な防災上危険な市街地が存在するなど、魅力あるまちづくりを進めていくうえで、大きな課題となっておりました。

このような課題を解決するため、連続立体交差事業や土地区画整理事業とともに、路面電車の延伸や駅前広場の再整備が進められることとなり、四国最大の都市である松山市の交通拠点としての機能充実はもとより、周辺圏域の活性化にも大きな効果をもたらすものと期待されております。

駅周辺においては、更地や新築工事を見かけるなど、着実に事業が進んでおり、石手川付近の行き違い線区間の工事や伊予市・松前町に移転する新車両基地・貨物駅の造成工事も徐々に完成に向かっている様子がうかがえ、今後は、JR松山駅付近の高架工事が本格的に動き出すものと期待しております。一方では、先般、完成時期が4年伸びるとの発表もあり、早期の完成を望む声や歩みを心配している声も聞こえてきます。

そこでお伺いいたします。

JR松山駅付近連続立体交差事業の現在の進捗状況と今後の見通しはどうか、お聞かせください。

 

次に、松山外環状道路の整備状況についてお伺いいたします。

松山外環状道路は慢性的な渋滞が起こる松山環状線の外側に位置し、松山港や松山空港、松山インターチェンジを結ぶとともに、国道196号や56号、33号、11号といった松山市内と郊外をつなぐ主要な国道を連絡する地域高規格道路で、市内の渋滞解消はもとより、松山市外からのアクセスを改善することが期待されており、現在整備が進められております。

松山空港の利用促進という観点からみても、以前は、最寄りの松山インターから松山環状線を経由して、空港に至る所要時間は30分かかっており、これは全国の拠点的な空港の中でワースト5に入るアクセスの悪さでありましたが、松山外環状道路インター線と、空港線が開通することによって、松山インターから松山空港までの所要時間は30分から10分に短縮されるなど、松山市民のみならず、市外から松山空港を利用する方にとっても、大きな利便性の向上が見込まれるところであります。

平成28年12月に古川インターチェンジから市坪インターチェンジまでの1.8kmが開通し、国道33号から国道56号までの4.8kmの松山外環状道路インター線が全線開通いたしました。

これにより、国道56号から松山インターまでの所要時間が20分から4分へと8割短縮されるなど、松山市西部、松前町方面から高速道路への利便性が向上いたしました。

さらには、交通の分散により、「主要渋滞箇所」である天山交差点等の渋滞緩和も期待されています。

また、交通事故の減少にも大きく貢献しており、インター線全線開通前の、井門インターから古川インターが開通した際には、国道33号における交通事故が約1割減少し、その中でも追突事故は約3割減少したとのことであり、インター線の全線開通によって更に効果が出ているのではないかと思います。

他方、空港線は余戸南から北吉田に至る、約3.8kmで現在工事が進んでいます。

国体開催までの本線開通は難しいとのことですが、側道が空港まで開通する見込みであり、来県者の利便性に大きな効果を発揮するものと思います。

このように松山インターから松山空港までの事業は、概ね順調に進んでおり、空港までの全線開通が待ち遠しいところであります。

この松山外環状道路が、更なる効果を発揮するためには、県の平成30年度の重要施策要望にも挙げて頂きましたが、国道33号から国道11号へ向けての整備が必要であると考えます。

国道33号から東へ向かう利用者からは、国道11号へ繋がる区間の早期実現を強く望む声が聞こえてきます。

先般、松山市議会の自民党メンバーとともに国に対して、要望活動を行いました。

石井国土交通大臣、田中副大臣、そして事務次官にそれぞれ要望書を直接手渡すことができ、事業化へ向けての地域の想いを伝えることができました。

県としても力強く推し進めて頂いていることは大変ありがたく、県も、市も、我々議員も、住民もいろいろな立場で声を上げ、国に対してその必要性と、地域の想いを伝えることが重要だと考えております。

今回の要望活動ではそういった想いを伝えることができたのではないかと考えております。

そこでお伺いいたします。

松山外環状道路の整備状況と、国道33号から国道11号までの区間について今後の見通しをお聞かせ下さい。

 

次に、民活運動部活動支援事業についてお伺いいたします。

昨今、働き方改革が叫ばれる中、小中学校教員の時間外労働の多さが指摘されています。

本年4月に文部科学省が公表した「公立校教員の勤務実態調査結果」では、学校内勤務時間が週60時間以上の教諭が小学校で33.5%、中学校で57.7%に上っています。

週40時間までとされている労働基準法に基づくと、週20時間以上の時間外労働をしていることとなり、月80時間超が目安の「過労死ライン」を上回る数字であることが新聞でも取り上げられていました。

先生方にお話を伺いますと、「授業を充実したものにしようとすれば、準備に時間がかかる」「部活動の顧問などをすれば、授業と部活動との時間が必要でどうしても勤務時間は長くなる」などの声がありました。

実際、学校現場の教員は、授業や部活動のみならず、保護者からの苦情対応や地域行事への参加、生徒指導など、多岐にわたる役割を担っており、重責を果たしている教員の時間外勤務が増加するのは、いわば当然の結果であります。

先般6月1日に出された国の「教育再生実行会議第10次提言」では、「今日の日本の学校教育は、教師の長時間勤務に支えられている状況にあり、この状況が続けば、学校現場の持続可能性を維持することは困難であると言わざるを得ない」と警鐘を鳴らすと同時に、「教師の長時間勤務に支えられている状況は既に限界に来ており、教師の業務負担の軽減が喫緊の課題」とされております。

これら教員の長時間勤務の原因の一つとして、10年前の調査と比較して、中学校における「部活動」の時間が特に増加していることが挙げられており、「学校による部活動」から「地域による部活動」への持続可能な運営体制の整備を進めるよう提言されています。

実際、部活動の現場では、スポーツ経験のない教員が運動部の顧問になるケースや、スポーツ経験のある教員でも、顧問となった部活動の競技経験がないことなどが多々あるようであります。

このような場合、顧問となった教員は、未経験の競技の研修などを受けなければならず、精神的負担も大きくならざるを得ません。

このような状況を踏まえ、国では地域人材や民間事業者等を活用し、部活動指導員の配置を促進することとしており、厳しい環境に置かれている教員の負担軽減につながるものと期待しているところであります。

しかしながら一方で、部活動は、やはり教育の一環であり、思春期の子供たちの人間形成の大切な時期に、友情や努力、忍耐、達成感など、部活動で学ぶべきことは多くありますが、教育的側面から考えますと、教員資格を持たない外部指導員にどこまでの責任を負ってもらうのか、制度として確立していくには大変な試行錯誤が予想され、一抹の不安を拭えないのも事実であります。

山口県宇部市では今年度、地域の外部人材を嘱託職員として採用し、公立中学校の部活動に派遣する「部活動指導員制度」を新設しました。

指導員の勤務時間は1ヶ月20時間程度とし、報酬は月額24,000円とのことでありますが、指導員には年2回、体罰の禁止や、安全管理の徹底、教育的意義などの研修を開催するとのことであります。

教員の負担軽減に向けた新たな取り組みが始まっております。

本県においても、今回の補正予算案に、「民活運動部活動支援事業費」を盛り込み、新たな運動部活動指導体制の構築に向けた実践研究に取り組まれるとのことでありますが、教員の負担軽減や子どもたちの部活動の充実のためにも大変意義あるものと考えます。

そこでお伺いいたします。

教員の多忙化解消に向け、県として民活運動部活動支援事業にどのように取り組んでいくのか、お聞かせください。

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